夜明けを見なかった祈手がいた話 ー全年齢





2020年5月にツイッターにあげた、祈手と前線基地の子供の漫画でした。

当時GWコミケにサークル参加する予定でしたが参加できなくなったのでエア新刊として描きました。

ペイジンって原作では4巻で名前が、その後11巻で再登場してました、そうあれですあいつです。

まぁ彼はどう考えてもオース管轄の隊の月笛なんですが勝手に祈手にさせた漫画を描きました。いいんですよ、二次創作ってそういうものなので。

ギャリケーとの会話も一応4巻を見ながら相違のないようにしてあるので見比べてみてください。


ペイジンとタリアの出会いの漫画もいつか描きたいと思っていましたがもういつ描くか分からないので文章で書きます。いいんです、二次創作ってそういうものなので。





黎明卿がセレニを訪れた時のように、ある遠くの国にペイジン達は来ていました。

そこにも身寄りのない孤児たちがいたのでいつも通り深淵に踏み入る勇気のある子どもを募りました。孤児といえどとてつもなく酷い境遇にさらされているわけではなかったのか、あまりいい反応はありませんでした。そんな中一人の子供が言いました。

「おじさんたち、タリアを連れて行ってあげてよ」

タリア?タリアって誰?

孤児たちに連れられて粗末な建物が並ぶ奥まった路地を進んでいくと瓦礫の傍で小さな女の子がうずくまっていました。他の孤児たちよりも汚れた風貌で、顔を下にしたまま動きません。

聞くと、タリアには父親がいるけれども暴力を振るわれほとんど家に入れてもらえずいつもお腹を空かせていると。そんな父親がいるので子供たちに施しをする人も手を出せないでいると。

言葉に詰まります。我々も施しをする為にここに来たのではないし、アビスに来る意思のない子供にはどうすることもできない。

悪いけど助けることは、できない。そう言ってその場を離れるといつの間にか4~5人になって様子を見ていた孤児たちが言いました。

「タリアはここに居たら、そのうちきっと殺されるんだよ」

ふぅとため息をついてそのタリアと呼ばれている子供の頭を優しく上げると、その子の顔は父親から受けたものなのか顔の右半分が真っ黒に腫れていて、亀裂かと思ったそれは上手く開かない虚ろな小さな目でした。

ペイジンがタリアを背負うと、後ろの祈手がそっと耳打ちをしました。

「手当をしたら、戻すよねぇ?」

「子供たちの手前、放っておけないだけだよねぇ?」

ペイジンも心の中で思います。そう、いいとこ見せないとここの子供たちは俺たちについて来てくれない。俺たちは子供たちを信用させないといけない。

「タリアは、川に流されたことにしておくから!」

声のする方に目を向けると、孤児たちが皆、ペイジンを見ていました。

彼らの目は希望に満ちた、安心したような目でした。


結局、そこでは誰一人深淵を目指す子供はいませんでした。


アビスの3層で立ち止まっている輸送用の籠の外で祈手が先程死んだばかりのネリタンタンを掴みながら言いました。

「運がいい。新鮮なうちに焼いちまおう。行動食もあるけど、どっち食う?」

ペイジンは言いました。「どちらでも、余ったほう」

祈手は呆れています。「お前はいつもそうだ。基地に戻ったらずっと行動食なんだから、選べよ」

ペイジンは、少しだけ下を向いて静かに言いました。

「選ぶなんて…」

「なんだ?聞こえない」

「俺は行動食」


ペイジンが籠の中で丸くなって寝ているタリアを見ました。タリアが言葉が上手く話せない事、匙も上手く持てないことは子どもたちから聞いていました。父親に暴力を振るわれ続けて何もできなくなってしまったと。

ペイジンは籠の内壁に固定されている食料箱から行動食4号を2本出しました。





ペイジンはタリアの意思を確認しないまま前線基地に連れてきてしまい、周りの祈手からもどうするんだよ~と言われまくっていました。その度に「あそこにいても連れてきても一緒なら連れてきた方がマシと思っただけ」と返して「本当にそう思う?」と言われて凹んでいました。

ペイジンは子供を使った実験にいい印象がなく、祈手という存在自体にも疑問を持っていて色んな答えを見つけるために様々な活動に参加しています。海外にも行くし実験もするし調査にも行く。アビスに対抗するには手段を選んでいられないのは頭では理解できるが、長らくの探窟史や人間としての道徳だってある。しかし、黎明卿の目指す先も見てみたい。そんな矛盾と葛藤を抱えています。病んでるので目が死んでいます。(病んでる祈手描くの好きだな?ああ、大好きだ!!)

葛藤を抱えることは彼には辛いことなので自分で決めるということ自体もあまりしなくなっていました。祈手だからこうした、という考え方に落ち着いています。

そんな彼はタリアを放っておくことはできませんでした。

ペイジンは仕事とタリアの面倒で暫くとても忙しかったので考えることをあまりしなくなり、おかげでタリアはペイジンにとても懐き、そして彼もとても楽しい日々を過ごします。

ペイジンはタリアを事故に遭わせた祈手を責めることはしませんでしたが、かわりに自分を責めます。そして、最後に自分で自分とタリアの行く末を決めました。

このペイジンとタリアはナナチとミーティの相対関係にして描いているのでとても似ていますがペイジンとナナチは違う道に進みます。

ナナチはレグに行動を止められていますがペイジンの行動を止めた人(この場合ギャリケーがそれにあたるが)はいませんでした。これもまたナナチとペイジンの運命の違いにしました。

タリアはラストに手を上に向けていますがこの時成れ果てになったタリアには意思はありません。ただの反応です。しかし、タリアはペイジンの選択に抗うようにこのようなポーズにさせました。タリアはペイジンのことが大好きなので死んだり悲しんで欲しくはないのです。